空前のサウナブームにより、「ととのう」や「サ飯(サウナ飯)」などのサウナ用語が話題に。近年はこれまで入浴施設内に設置されていたサウナの他、サウナに特化した施設やサウナ小屋が日本各地に登場するなど、多種多様なサウナを楽しめるようになりました。
ところで、「短時間で大量の汗が出るほどの高温」というイメージのあるサウナですが、サウナの種類によって、温度帯や得られる効果が異なると言われていることをご存知でしょうか。
今回は、サウナの平均温度や期待できるであろう効果を、種類ごとに紹介します。水風呂の入り方やサウナを利用する際の注意点も解説していますので、「サウナにはよく入るけれど、温度に違いがあることは知らなかった」「温度に応じた正しい入り方を知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
サウナの種類と平均温度
サウナに「高温」のイメージがあるのは、1964年の東京オリンピック以降に普及した日本のサウナが、高温低湿の「乾式サウナ」だったからではないでしょうか。しかし、実はサウナ発祥の地、フィンランドのサウナの温度は、日本ほど高くありません。
現在日本にあるサウナの設定温度は、サウナの種類や施設によって異なるものの、低温では30度、高温では120度と、幅広い温度帯が存在します。サウナの種類を温度や湿度ごとに分類すると、以下の通りです。
乾式サウナ | フィンランド式サウナ | 湿式サウナ | |
温度 | 高温(80~100度) | 中温(60~80度) | 低温(40~60度) |
湿度 | 低い5~10% | 中間15~30% | 高い80~100% |
代表的なもの | ドライサウナ | ロウリュサウナ | スチームサウナミストサウナ |
公衆浴場などに設置されているサウナで一般的なのは、乾式の「ドライサウナ」ですが、近年は温度が低めの「フィンランド式サウナ」や低温高湿の「湿式サウナ」など、さまざまなサウナが登場しています。温度による効果の違いや入り方については、後ほどご紹介する内容を参考にしてください。
高温でもやけどしないのはなぜ?
熱湯に触れるとやけどをしてしまうのに、室内温度が100度前後にもなるサウナ室内にいても、やけどをしないのはなぜでしょうか。その理由は大きく2つあります。
熱の伝導率が違うから
1つ目は、液体と気体の「熱伝導率」の違いです。熱湯に触れた瞬間に熱いと感じるのは、液体の熱伝導率が高く、熱が皮膚に伝わるまでの時間が早いからです。一方、気体である空気は、液体に比べて熱の伝わり方が緩やかなため、室温が高くても皮膚がやけどをするほどの熱さを感じることはありません。
ここでポイントとなるのが、湿度です。高温のドライサウナは、5~10%の湿度を保っているので、熱伝導率が低く、やけどをしにくいと言えます。反対に、湿度が高いと熱の伝導率が上がるため、湿度が80~100%にもなるスチームサウナやミストサウナなどの「湿式サウナ」の室温は、40~60度の低温に設定されているのです。
汗が皮膚を守るから
2つ目の理由は、サウナでかいた汗が皮膚を守っているからです。汗が蒸発する際に気化熱として周囲の熱を奪うため、体表温度が下がります。これは、夏に打ち水をして道路の温度を下げるのと同じ原理です。
日本のサウナの最高温度は150度
一般的なドライサウナの平均温度は80〜100度ですが、サウナ室の材質や室内を温める方法によっては、100度を大きく上回るサウナも存在します。
日本で一番温度の高いサウナは、「古代サウナ」とも呼ばれる、香川県さぬき市にある「塚原のから風呂」。その温度は150度を超えるとも言われています。
超高温のサウナにする秘訣は、石室と加熱の方法。まず石室内で組み上げた薪と松葉を1時間ほど焚き上げ、火が付いたままの状態で床に敷き詰めます。その上に濡れむしろと濡れごもを重ね、塩水をまき、入口を閉じてさらに1時間ほど蒸らすそうです。炎で直接熱せられた石室内の壁は大変高温になっているため、利用者は長袖・長ズボン、布草履、頭巾を着用し、さらに毛布を被りながら入浴します。
【温度別】得られる効果と正しい入り方
使用するものや形態によってもさまざまな種類があるサウナは、その温度や湿度によって得られる効果が異なると言われています。ここでは、温度別の正しい入り方をご紹介します。
なお、「サウナ室に入る前にしっかりと体を洗う」「こまめな水分補給をする」は、全てのサウナに共通するポイントです。
ドライサウナ(高温)
ドライサウナの平均温度は80〜100度で、高温低湿であることが特徴です。入口の扉を開けた瞬間に熱波を浴び、サウナ室内はじりじりと強い熱気を感じるでしょう。汗をかいてもすぐに蒸発するので、ベタつく不快感もありません。
ドライサウナは短時間で体を温めるため、血行促進や痩せやすい体づくり、疲労回復、むくみ解消など、さまざまな効果が期待できると言われています。5~10分程度のサウナと1~2分の水風呂、休憩(外気浴)を1セットとしてそのサイクルを繰り返す「温冷交代浴」により、「ととのう」という独特の陶酔感を得られることもあるでしょう。
入り方のポイントは、入室の前に体についた水滴をしっかり拭くこと。気化熱により体が冷えるのを防ぐとともに、発汗作用を高めることができるそうです。一方で、湿度が低いドライサウナは乾燥による皮膚や髪への負担が大きいため、サウナハットを着用したり、頭にタオルを巻いたりするなどの工夫をしましょう。
ただし、心臓系の持病がある方や高血圧の方は体への負担が大きいため、ドライサウナの利用は避けてください。
遠赤外線サウナ(中~高温)
遠赤外線サウナの温度は、ドライサウナより低めの65~70度程度で、湿度も35~50%程度です。サウナ施設によってはドライサウナに近い高温になるところもあります。
入り方はドライサウナと同様に、温冷交代浴を行ってください。空気から熱を伝えるドライサウナとは異なり、遠赤外線サウナは、体を直接、深部まで温めると言われています。熱気による息苦しさや扉の開け閉めによる体の冷え、乾燥も少ないでしょう。じっくりと体を温められるため、血行が促進され、肩こりや冷え性の改善、代謝アップ、デトックスにつながるかもしれません。
体に負担がかかりにくいので、サウナ初心者にもおすすめです。
フィンランド式サウナ、ロウリュサウナ(中温)
「フィンランド式サウナ」とは、フィンランドのサウナスタイルを踏襲したサウナのこと。ストーブ上で熱したサウナストーンに水やアロマ水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」を行うのが特徴で、「ロウリュサウナ」とも呼ばれます。
フィンランド式サウナでも、温冷交代浴を行うのが一般的です。室温が60~80度と中温で、ロウリュによって湿度も調整できるため、ドライサウナのヒリヒリとした感覚や息苦しさが苦手な方でも、無理なく入ることができるでしょう。
ロウリュによって発汗が促されるので、リラックスしながらじっくりと汗をかくことができ、疲労回復や血行促進、免疫力の向上が期待できるそうです。
スチームサウナ、ミストサウナ(低温)
スチームサウナとミストサウナは、どちらも室温が40~60度、湿度が80~100%と、低温高湿な「湿式サウナ」に分類されます。それぞれの違いは、物質の状態の違いです。
スチームサウナ | ミストサウナ |
気体(蒸気) | 液体(温水) |
湿度の高い湿式サウナは低温であっても体感温度が高いため、ゆっくりと発汗を促しつつ体を温めてくれます。肌を保湿しながら老廃物や余分な皮脂を排出することから、美肌効果や体臭の軽減などに効果があると言われています。また、40度程度の入浴によって副交感神経が優位になると言われており、リラックス効果や快眠効果も望めるかもしれません。
低温サウナなので、入室の前には入浴をして十分に体を温めておくことが大切です。サウナに入室後10~20分程度で、じわじわと汗が出てくるでしょう。サウナ後は汗を流してから水風呂に30秒ほど浸かると、血行が促進されるそうです。ただし、体が冷えやすいので、入る時間は短めにする、もしくは水風呂に入らずぬるめのシャワーを浴びる程度でもよいでしょう。
【番外編】アイスサウナ(超低温)
日本のアイスサウナは、高温サウナで温まった体を冷やすための超低温サウナのこと。温冷交代浴の「冷」の役割を担うサウナと捉えるとよいでしょう。北欧の冬の環境を再現したアイスサウナの室温は、マイナス20度ほどになることもあります。
室温にもよりますが、アイスサウナは室内の冷気でゆっくりと体を冷やすのが特徴です。水に浸かることで一気に体を冷やす水風呂とは違い、無理なく入ることができ、血行促進や炎症抑制の他、リラックス効果が期待できると言われています。
水風呂の温度と入り方
水風呂の温度は季節や施設によって異なりますが、平均は16~24度で、17度前後が最適と言われています。10度前後の冷水になると、心臓や体にかかる負担が大きくなり、危険です。特に高齢者や心臓に持病がある方は、無理をして入らないようにしてください。
サウナ後に水風呂に入る際は、事前にかいた汗をシャワーなどでしっかりと流し、足先や手先など、心臓から遠い場所から徐々に浸かります。入る時間は30秒~2分程度で、体を冷やしすぎないことが重要です。
その後、外気浴のできる環境下や施設内のベンチなどで休憩をすると、心地よいリラックス感を味わえるでしょう。サウナ、水風呂、休憩(外気浴)を1セットとして2~3回サイクルを回すことで、自律神経の調整力を高められると言われています。
サウナを利用する際の注意点
最後に、サウナを利用する際の注意点をご紹介します。
座る位置でも温度が異なる
サウナ室内の温度は、座る場所によっても異なる点を覚えておきましょう。ベンチが2、3段になっているドライサウナの場合、上段は90〜100度、下段は70度と、20~30度の差があります。それは、温かい空気は上にたまる性質があるためです。
また、ストーブやヒーターなどの熱源の近くは高温になり、人の出入りが多く熱気が逃げる扉付近は低温になります。サウナ室内に設置されている温度計の表示は、あくまで「温度計がある場所」の温度であることに注意が必要です。
以上のことを踏まえ、「サウナ初心者」や「じっくりと汗をかきたい方」「1セット目」は温度が低い入口付近の下段からスタートし、暑さに慣れてきた「上級者」や「熱気を感じたい方」「2セット目以降」は扉や熱源から遠い位置の上段に徐々に移動するとよいでしょう。
入る時間にも気を付け、無理をしない
サウナに入る際には、温度や座る場所だけでなく、滞在時間にも注意しましょう。無理をして高温のサウナに入ると、脱水症や熱中症の危険があり、大変危険です。
長く入ることにこだわらず、最初は5分前後の短い時間から始め、次のサイクルでは時間を少し長くするなど、体調を見ながら時間を調節していきましょう。つらさを感じたら、我慢せずに退室することが重要です。
ちなみに、ドライサウナ内でよく見かけるサウナ時計(サウナタイマー)には分針と秒針しかなく、「分針が1周すると12分経つ」ことを示しています。サウナの入浴時間も5~12分が最適とされているため、長くとも12分を超えないようにしましょう。
自分に合った温度のサウナを楽しもう
サウナの温度は、サウナの種類や座る場所、それぞれの施設の温度設定などによって異なります。目的や気分によってサウナの温度を選ぶことも、サウナの楽しみ方の一つと言えるでしょう。
大切なのは、その日の体調に合わせた温度や場所を選び、無理のない時間で入ること。サウナ初心者の方や初めて利用する施設の場合は、慣れない環境に体が適応しきれないことも考えられます。コンディションを第一に考えながら、ベストな温度やポジションを見つけ、サウナ活動を楽しんでください。