浅間山の南麓に位置し、城下町として栄えた長野県小諸市。浅間サンラインから高峰山へ向かう中腹に、800年の歴史を持つ菱野温泉があります。登山電車に乗り込み、標高約1,000mの森の中へ進むと、浅間山と八ヶ岳を一望できるフィンランド式サウナ施設Sauna Space TOJIBA(湯治場)が見えてきます。TOJIBAのスタッフとして働く小諸市出身の阿部翔太さん。聞くと、東京からUターンをし現在はサウナ番とITの両方の仕事をしているとのこと。どのようなきっかけだったのか、浅間サウナラインのサウナー岩上が話を伺いました。
ジム通いで筋トレよりもサウナにハマる

岩上:さっそくですが、阿部さんがサウナにハマったきっかけを教えてください。
阿部さん:ボディメイクに凝っていた時期がありジムに通っていました。ジムにはサウナがついていて、「筋トレを頑張ったらご褒美でサウナに入れる」と、自分にルールを課していたんです。そうしたら…
岩上:サウナにハマった?
阿部さん:そのうちサウナのためだけに行くようになり、週5日は通っていました!
岩上:目的が入れ替わっちゃった(笑)。2021年にUターンしてきたとのことですが、なぜ小諸に帰ってきたんですか?
阿部さん:東京ではIT系広告会社に勤めていたんですけれど、コロナ禍はリモートワークをしていました。アパートの契約更新がきたときに「住む場所は東京じゃなくてもいいな」と感じて。
岩上:それで帰ってきたと。
阿部さん:実はこのタイミングで、同棲していた彼女とも別れたんです。「もう東京にいなくてもいいや」と吹っ切れました!(笑)。

岩上:タイミングは重なるものですね。では、どのようなきっかけでTOJIBAで働くことになったのですか?
阿部さん:Uターンした翌年の夏に、小諸の駅前広場でテントサウナのイベントがありまして。
岩上:駅前広場でテントサウナイベントとはすごい!
阿部さん:初めてのテントサウナ体験だったんですけれど、バッチバチにととのっちゃったんですよ。すると、TOJIBAオーナーの花岡さんが「小諸にサウナを作る予定で、スタッフを募集しているんだよね」と声をかけてきて。
岩上:サウナでリクルーティング!
阿部さん:開放感に包まれていたので、二つ返事で「いいっすね!」と。
岩上:それは抗えない…。
阿部さん:地元の友人と「これから小諸を盛り上げたいね!」と話していたこともあり。
岩上:完全に気持ちが動いちゃったんですね。
阿部さん:イベントの2日後には会社を退職する算段をつけて、花岡さんに「TOJIBAのお話を聞かせてください」と連絡していました。
大自然に抱かれる。TOJIBAの魅力

岩上:改めてTOJIBAはどのようなサウナですか?
阿部さん:森の中で大自然を堪能できるフィンランド式のサウナ施設です。周辺は建物もないので、四季折々の大自然と一体になってゆったりと過ごすことができます。

阿部さん:サウナ小屋は黒く焼入れをした丸太を使用し、本場フィンランドのスモークサウナをイメージしています。ストーブは地元の職人さんにオーダーメイドで作ってもらいました。

岩上:阿部さんが伝えるTOJIBAイチオシポイントを教えてください。
阿部さん:まず自慢したいのは、サウナ室の広さです。定員いっぱいの6名で利用しても十分くつろげます。ゆったりとした室内で、思う存分くつろいでいただきたいです。

岩上:アウトドアサウナならではのゆとりを感じます。
阿部さん:次に自慢したいのはこの大きな水風呂。飲める水風呂と紹介しています。

岩上:飲めるんですか?
阿部さん:近くの水源地から湧き水を引いています。僕が子どもの頃から親しんできた小諸の天然水をみなさんにも体感してほしいですね。お客様からも「いい水風呂だね!」と言っていただいています。
岩上:水風呂のサイズも大きい!
阿部さん:併設している温泉施設 菱野温泉常盤館の展望露天風呂「雲の助」を改修した際に使わなくなった風呂桶を再利用しています。

岩上:大自然の中での外気浴も気持ちがよさそう!

阿部さん:森の中にあるので、鳥のさえずりや葉が風にそよぐ音を聞きながらととのうことができます。僕はTOJIBA以外にもフリーランスで仕事をしているので、サウナで働いているときはデジタルからちょっと離れられる。このハイブリッドな感じがちょうどよくて気に入っています。働きながらととのっちゃう環境です。
お客様とも自然ともとことん向き合う
岩上:阿部さんはTOJIBAで働く上で、なにを大切にしていますか?
阿部さん:お客様のニーズに合わせてコミュニケーションをとることです。

岩上:具体的には?
阿部さん:サウナの楽しみ方は、人によって全然異なりますよね。仲間同士でワイワイしたい人もいれば、自分とじっくり向き合いたい人もいる。
岩上:そのときの気分でも違いますしね。
阿部:貸し切りにする人もいれば、相席でご利用いただくことも。どのような状況でも、TOJIBAに来てくださったすべての人に満足していただけるよう意識しています。バーのマスターになったイメージで場を回します。

岩上:例えばどのような感じでお客さんと接するんですか?
阿部さん:お客様は基本的にサウナが好きな人たちなので、「普段どんなサウナに行かれるんですか?」といった会話から、お客さんの好みを探ります。
岩上:僕だったら開放感からたくさん話してしまいそうだ!
阿部さん:相席の場合は、共通点を探すような会話でアシストすることも。すると僕がその場にいなくても、みなさん自然と仲良くなっているんです。
岩上:サウナを通してだと、すぐに打ち解けられるんですよね。
阿部さん:もちろん1人になりたい人もいるので、そういうときは影からそっと見守るなど、お客様の希望を汲み取るように心がけています。
岩上:まるでコンシェルジュのようだ!そのホスピタリティはどこから湧いてくるんですか?
阿部さん:コンシェルジュという表現、うれしいなぁ。しっかりととのって「いいサウナだった!」と言ってもらえることでしょうか。お客様の満足が、自分の仕事への満足、自信につながっています。

岩上:サウナで働くことのおもしろさはどういったところにありますか?
阿部さん:アウトドアサウナは自然を相手にすることがあるので、天候により火の付き方、小屋の温まり方、水風呂の温度など、常に変化します。うまくいかないこともありますが、自然からのフィードバックがダイレクトに感じられるのが魅力です。
岩上:アウトドアの醍醐味ですね。
阿部さん:自分の力ではコントロールできないことに相対したときに、どう向き合うか。僕はTOJIBAでの仕事を通して、操縦不可能な状況をも楽しんでしまうスキルを身に付けたような気がします。

身体も心もととのうメソッドをみんなに

岩上:この先チャレンジしてみたいことはありますか?
阿部さん:これまで広告の仕事をしてきたこともあり、最近はSNSを活用した発信に力を入れています。
岩上:これですね、「ととのうメソッド」。



阿部さん:ビギナーの人向けに、サウナに関する質問に答えています。例えば「サウナを出るタイミングがわかりません」「サウナ室での作法がわかりません」といった質問に、自分なりの考えをベースに提案しています。
岩上:興味はあるけどハードルが高いと感じている人もいそうですしね。
阿部さん:ゆくゆくは僕のキャラクターと経験をもっと活かして、入り方などのハウツー以外にも、心をととのえる方法や楽しみ方も伝えて行きたいです。

岩上:阿部さんのようなホスピタリティのある人にアテンドしてもらえたら、かなりリラックスできそう。
阿部さん:僕はサウナを身体と心をととのえる場所と思っていますから。
岩上:身体だけではなく心も、というのがポイントですね。
阿部さん:僕のととのうの定義は無に近いです。サウナの熱さと水風呂の冷たさを体感すると体内にめまぐるしい変化が起こります。そんな乱れた状態で外気浴をすると、静かに落ち着いていき、無になるんです。
岩上:あぁ、無になりたい!
阿部さん:最近感じているのは、無の次は創なのではということです。
岩上:ととのったあとにくる次の境地。
阿部さん:ととのった後にいろんなアイデアが浮かんでくるんです。ひらめく感じ。すぐにサウナを出てスマホにメモしています。サウナにはスマホを持ち込めないので、余計なノイズがなく集中できるのかもしれません。
岩上:僕も創の境地を体験してみたくなりました!
阿部さん:ぜひ、この小諸の大自然の中で体験してください!
岩上:阿部さん、今日はありがとうございました。

Sauna Space TOJIBA~湯治場~
website:https://tojiba-sauna.com/
住所:長野県小諸市菱平762-2
電話番号:0267-22-0077
休業日:火曜日、水曜日(冬期12月~3月は木曜日も休業)
利用可能時間:9:00~11:00、11:30〜13:30、14:00〜16:00、16:30〜18:30、19:00〜21:00 ※完全予約制
<聞き手>
岩上健太郎
Sakura39合同会社代表として、ファスティングを用いたメンタルコーチを経営者やアスリート向けに提供。長野県に移住したことをきっかけに、アウトドアサウナを体験する。 会議や商談、コーチングする場所としてアウトドアサウナの可能性に気付いてしまう。首都圏でリフレッシュを求めている経営者を長野のアウトドアサウナで覚醒させることを目論見中。
<photo>杉山亜衣