長野県立科町は、日本百名山の蓼科山や女神湖、白樺湖、蓼科牧場を有し、豊かな自然があふれる場所です。町の集落から少し離れた高台に、築120年ほどの古民家の離れ小屋をリノベーションしたフィンランド式サウナ「DOMA SAUNA(ドマサウナ)」があります。風情あふれるこのサウナをオープンしたのは、自らが楽しむことをマストに掲げるオーナー・國澤慎治さん。サウナに携わるきっかけや魅力について、浅間サウナラインのサウナー岩上が話を伺いました。
古民家リノベ。民泊は無理でも、サウナなら!
岩上:ここは見晴らしがよくてのどかで、ととのう場所にはもってこいですね。國澤さんは立科町のご出身ですか?
國澤さん:いいえ、兵庫県の出身です。
岩上:なぜ立科へ?
國澤さん:女神湖やその周辺の自然が好きで、昔から年に2~3回は来ていました。大学卒業後、6年ほど百貨店勤務を経ていくつか転職したんですが、ある時「空気のいいところに移住したいな」って思い立って。
岩上:それで、馴染みのある立科にいらしたんですね。立科に来てからはどんなことを?
國澤さん:以前から興味を持っていた民泊の経営をしています。「TATESHINA AKARIYA」という民泊で、このDOMA SAUNAのすぐ近くにあります。
岩上:民泊を経営していた國澤さんが、なぜサウナを始めることになったんですか?
國澤さん:立科町に移住してきてからはアパートに住みながら、自宅を建てる場所を探していました。そんな時に、築120年を超える古民家と、築80年くらいの離れ小屋に巡り合ったんですね。
岩上:おお!
國澤さん:本当は自分たちの住居にしたかったのですが、リノベーションするにはとても費用がかかるとわかり……。結局、自宅は別の場所に建て、古民家はサウナ付き民泊にしようと考えたんです。
岩上:なるほど。
國澤さん:でも費用面で折り合いがつかず……。困ってしまい、信頼しているアドバイザーの方に相談したら、「サウナだけを先に始めてしまうのはどうですか?日帰り施設でいいじゃないですか」って。
岩上:それで、サウナ施設を?
國澤さん:前からサウナにハマっていてサウナの魅力はよくわかっているので、「よし!サウナ施設にしよう!」と決めました。
古民家の雰囲気を活かした本格サウナ
岩上:國澤さんがサウナにハマったきっかけは?
國澤さん:2019年、知り合いのサウナーに誘われて一緒にサウナに行ったんです。サウナ→水風呂→外気浴と経験したら「やばっ!」と。
岩上:それまでサウナには興味なかったんですか?
國澤さん:はい。熱いイメージしかなかったんですよね。猛烈に熱い室内で、時計の針を見て「あと3分耐えよう」みたいな。武士道に通じるストイックさを感じ、楽しそうだとは思えませんでした。
岩上:サウナ―と一緒に行くことで、ととのう体験をされたんですね。
國澤さん:はい!ちょうどその頃、北欧ひとり旅を計画していたので、渡欧した際にフィンランド、デンマーク、ノルウェーでもサウナ体験をしてきました。
岩上:北欧のサウナはいかがでしたか?
國澤さん:デンマークとノルウェーは観光客向けというか、エンタメに近いようなサウナが多かったですね。一方フィンランドは、サウナが文化として根付いている感じをものすごく受けました。
岩外:本場ですものね。
國澤さん:サウナという空間で仲間とおしゃべりをしながら時間を共有している。サウナを自由に楽しんでいる印象を受けました。もし、自分がサウナ施設を作るとしたら、そういう空間を作りたいなと思ったことを覚えています。
岩上:フィンランドサウナを体験した國澤さんならではの、DOMA SAUNAの特徴は?
國澤さん:古民家が持つ味わいを活かすことにこだわりました。
岩上:三和土(たたき)や壁の雰囲気が優しくて暖かくて、とてもいい感じ。落ち着きますね。
國澤さん:ありがとうございます!三和土と壁には「シリカライム」という素材を使っています。
岩上:シリカライム?
國澤さん:滋賀県の音羽山系で採掘された音羽晶石とフランス産の天然水硬性石灰を使った左官材で、長野県で生産されています。蓄熱、調湿に優れていて、サウナに使ったのは初めてだそう。
岩上:他にこだわった部分は?
國澤さん:サウナストーブです。長野県茅野市にある薪ストーブとサウナストーブの製造販売店に伺い、その場で即決しました。
國澤さん:ちょっと特徴を出したくて、全面をストーンで囲んだ上に、煙突の周りにもストーンを入れました。作業する方に「初めてやったよ」と言われました。
岩上:煙突にもストーンがみっちり。迫力ありますね。ただ疑問なのですが、どうやってサウナストーンを入れたのですか?
國澤さん:網の上から1つずつ落としました。
岩上:入れ替えはどのように?
國澤さん:そ、それが、サウナストーンを入れ替えるという知識がなかったものですから後先を考えす…。全部で約320kgのサウナストーンが入っていますが、なんとかやりますので大丈夫なはずです!(笑)
岩上:水風呂は井戸水を使っていると聞きました。古民家に井戸が引かれていたのですか?
國澤さん:いえいえ。掘りました!
岩上:え!?掘った!?
國澤さん:掘り当てられる気がして業者さんに掘ってもらったら、いい水が出てくれました。地下38mから組み上げた水温約13℃の井戸水。水風呂にピッタリで、私も嬉しいです。
根底にあるのは「自分が楽しいかどうか」
岩上さん:國澤さん、もしかして直感で動くタイプですか?
國澤さん:はい!めちゃめちゃ行き当たりばったり。
岩上:直感でサウナ作っちゃうの、すごいな。
國澤さん:私をサウナに連れて行ってくれた知人も、びっくりしています。
岩上:その直感力の秘訣は?
國澤さん:「自分が楽しいかどうか」を考え、自分の気持ちに素直になることでしょうか。
岩上:はい。
國澤さん:百貨店勤務時代に先輩から、「自分が楽しめない人が、お客さまを楽しませることはできない」って言われたんですね。その言葉がずっと心に残っています。
岩上:百貨店での接客の心得が今も役立っているんですね。
國澤さん:自分が楽しいと思えることは、お客さまに自信を持って勧められます。せっかくやるのなら、まずは自分が楽しめて、心地よいと思いたいなと。
岩上:DOMA SAUNAを体験した時にすごく感じたのですが、國澤さんはいてほしい時にはなぜかそばにいて、放っておいてほしいときには姿を見せなかった。これも百貨店の時のおもてなしの心から来ているのでしょうか?
國澤さん:そうかもしれませんね。
岩上:國澤さんが、フィンランドで感じて目指したいとおっしゃった「サウナという空間を仲間と共有しながら自由に楽しむ」に通じていますね。押しつけがましい感じが全然しない。
國澤さん:そうですか?仕事をする上で大切にしていることは、自分にかかるストレスを最低限にして日々が楽しいと思えるようにすること。その上で、お客さんも喜んでくれて、売り上げにつながって、さらにみんなが潤えばいいなと。
岩上:全く無理をしていませんね。そのゆったりした感じがサウナの空間ににじみ出ているように感じます。
國澤さん:そう言っていただけると嬉しいです。
もっともっと心地よい空間を目指して
岩上:そういえば、水風呂や外気浴スペースのレイアウトが2023年3月頃のオープンの時と異なっていませんか?
國澤さん:はい。快適な空間作りを考えていると、いろいろ変えてみたくなるのです。
岩上:ホームページで紹介しているレイアウトとも違いますよね?
國澤さん:変っちゃっていますね~。
岩上:日々のアップデートがすごい。
國澤さん:ハンモックも追加しています。水風呂の後、ハンモックに寝転がるのはどうかな?って思ってやってみたら、これまでにない感覚で!さっそく2つ、追加注文しました。最近、大きな水風呂と五右衛門風呂も追加したんですよ。
岩上:國澤さんの行動力はすばらしいですね。
國澤さん:ありがとうございます。でもね、自分の力だけでここまで出来たのではありません。最初にアドバイスをしてくださった方、大工さんや左官職人の方、ストーブ業者の方、いろいろなプロの方から多くのことを教えていただいたからこそオープン出来たのです。
岩上:リスペクトしている感じが伝わってきますね。周りの人と作り上げることに感謝の念を持っている國澤さんらしさが、サウナの空間に宿っている気がします。
國澤さん:ありがとうございます。
岩上:お話を伺い、DOMA SAUNAで体験した心地よさは國澤さんのお人柄から生まれているんだな、と実感しました。またととのいに伺います!
國澤さん:ぜひ!次回お越しの際は、ハンモックに揺られてくださいね。お待ちしています。
DOMA SAUNA (ドマサウナ)
website:https://domasauna.com/
住所:長野県北佐久郡立科町山部234-1
電話番号:070‐8453‐3173
休業日:不定休
利用可能時間:8:30〜11:30、12:00〜15:00、15:30〜18:30、19:00〜22:00 ※完全予約制
<聞き手>
岩上健太郎
Sakura39合同会社代表として、ファスティングを用いたメンタルコーチを経営者やアスリート向けに提供。長野県に移住したことをきっかけに、アウトドアサウナを体験する。会議や商談、コーチングする場所としてアウトドアサウナの可能性に気付いてしまう。首都圏でリフレッシュを求めている経営者を長野のアウトドアサウナで覚醒させることを目論見中。